KEK 電子入射器 (Linac) の復旧作業は少しずつ進んでいます。KEK
内の他の施設はほとんど停電状態ですが、入射器は装置への被害が大きいことと、最初に立ち上げる必要があるため、作業が続けられています。休日は電力制限
が厳しくないということもあり、3連休も継続しています。これまでの写真は一つ前の Pageに Link しています。
毎日、朝夕、入射器棟玄関で Meeting が開かれます。
14 日から 17 日には被害状況の詳細な調査が行われました。その調査結果を基にまずは真空系の回復が行われています。
真空を引き始めたら、壊れた溶接部が新しく見つかり、確認しているところです。右のボンベは窒素置換用の乾燥窒素です。
作業としては、まず壊れた装置を切り離し、各真空 Unit (約 20m) ごとにめくら蓋をして、Scroll Pump で 1 Pascal
程度まで真空を確認しました。湿気のある空気を避けるため、その後、窒素 Purge (置換) が必要になります。全部で 600m
の長さがあるので大変です。ここまでは 20 日 (日) までに、ほぼ終了しました。
壊れた真空 Bellows の例です。伸びきったあと縮んだものと思われます。
入射器の装置の架台は特殊な設計になっており、地震の力を逃がす工夫がされています。建設から 30 年これまでの地震に対しては比較的設計通りに力を逃がしていたのですが、今回の地震はその限度を超えてしまい、複数箇所が壊れました。
上の四重極電磁石は架台を外れて落ちてしまったものです。
作業が進めば、その後 Turbo Pump、Ion Pump で引いてみることになると思います。小さな真空漏れがあれば、そのたびに漏れ探しを行わなければならないでしょう。
しかし、壊れた装置はひとつひとつ作り直したり、修理したり、溶接し直したりすることになると思われます。これまで Beam に当たっていた部分もあり、少量の放射能を持っているので、修理・溶接も現場で行わなければならないと思われます。
これとは別に、建物の Expansion Joint が少し拡がってしまい、また地下水の流れが変わったか、地下水の Tunnel への流入が増えました。また、部分的に床が微妙に窪んだらしく、地下の自転車での行き来に支障をきたしていました。
手前の Expansion Joint 部と右の地下水の流路。Joint 部を左から右に地下水が流れている。
理事自ら Vinyl Sheet を貼って地下水流路を確保してくださり、いつのまにか神谷水路 (?) と名付けられたらしい。
真空系にめどが付いたら、装置を精度高く設置する作業や、地上部の装置の復旧に仕事が進む予定です。
いつもは夜中もこうこうと明かりの灯る KEK だが、福島原発からの放射線監視を続ける放射線管理棟と入射器棟以外はほとんど真っ暗。消火栓の赤 Lamp がやけに目立って感じられます。